AgileNight2012夏 〜岸良さんが何でも答えます!TOC90分一本勝負!〜に参加しました。

5月25日に開催されたAgileNight2012夏 〜岸良さんが何でも答えます!TOC90分一本勝負!〜に参加しました。
Agile Japan 2012の基調講演では充分な質疑応答が出来なかったということで、講演者である岸良裕司さんに時間の許す限り質問するという趣旨のイベントです。

Agile Japan および Agile についての説明

はじめに Agile Japan の実行委員長である西河さんによる Agile Japan および Agile についての説明がありました。
今回参加されているのは IT に携わる人だけではありませんでした。
TOC や CCPM についての話題ということもあり(?!)建設関係の方が目立っていました。

見積もりと期間について

システム開発では見積もりの難しさについての議論が必ずといっていいほどつきまといます。
それを解決するためのアプローチについての質問がありました。
まず、岸良さんから次のような問いかけがありました。

ユーザーは見積もり通りに契約してくれますか?

たいていは安く押さえられるし期間も短く厳しく設定されてしまいます。
ましてやそこに他社との競合も加わります。
このことを受けて岸良さんは次のように結論づけます。

見積もりがどうのこうのではなく、その予算と期間でやらざるを得ないんです。

ではどうすればよいのでしょうか。
それには、

工期を短縮する必要があります。

と岸良さんは言います。
そもそも、ユーザーは個人に対して発注するのではなく、企業/チームに対して発注します。
個人ではなく組織やチームで解決していく方法こそCCPM(Critical Chain Project Management)であるということです。

投資を回収するという視点について

CCPMの基になるTOCを提唱したゴールドラット博士の言葉によると、「価格が重要」ということです。
もう少し突っ込んだ言い方をすると、「投資を回収する」という視点が重要であるとのことです。
納期が遅れると、ユーザーはそれだけ投資を回収し始める時期が延びます。
このことはユーザーからすると(とても大きな)損失です。
「顧客に価値を提供する」、そのことをどこまで真剣に考えているのかと問いかけています。
これは Agile にも通じます。
(参考)アジャイルソフトウェア開発宣言

とりあえず病

岸良さんは次のように問いかけます。

プロジェクトを開始する際に、「とりあえず」あるいは「なんとなく」始めていませんか?

その結果、「しまった!!」とか「やべー」といった状況に出くわすことを「とりあえず病」と名付けたそうです。
今の日本ではこの「とりあえず病」が蔓延しているように、岸良さんは感じているそうです。

よい遅れと悪い遅れについて

プロジェクトとは「不確実なもの」であるので、スケジュールの遅れは避けて通れないことです。
ではすべての遅れが悪いかというとそうでもないよというお話です。
起こるべくして起きた遅れ、すなわち計画時にリスクを考慮してあらかじめ想定している遅れというものは、この文脈では「よい遅れ」です。
それに対して、「とりあえず病」で始めることによる、準備不足で遅れる稚拙な遅れが「悪い遅れ」と岸良さんは言います。

どこまで品質を作り込むのかについて

いいものを作りたいとして取り組むと、どうしても遅れが出てしまいます。
また、品質はどこまで作り込めばいいのかという質問がありました。
これについて、岸良さんは次のように問いかけます。

時間をかければ本当に品質は上がりますか?

CCPMでは待ち時間を短縮することにより、品質にかかる時間を充分に割り当てることが出来るようになります。

回収(リターン)を測る指標について

金額で測ることが出来ないような場合、例えば国道を作るような場合はどのように判断するのかという質問がありました。
これに対して岸良さんは問いかけます。

回収は金額でしか測ることができませんか?

例えば、

早く仕上げるということもリターンではないですか?

と岸良さんは問いかけます。
国道でいえば、

  • その国道が出来ることにより地価が上がりませんか。
  • 便利になり企業などが移転してくると税収が上がりませんか。
  • 税収が上がると住民サービスが向上しませんか。

また、期間という視点を持つことの重要性を繰り返し述べられていました。

三方良しの公共事業改革

三方良しの公共事業改革とは、

  • 住民よし
  • 企業よし
  • 行政よし

の公共事業での取り組みのことです。

三方良しの公共事業改革

三方良しの公共事業改革

施工業者のみならず、発注者および住民と「目標を共有する」ということが大切だと岸良さんは言います。
これにより、施工業者の作業員は住民から「ありがとう」と声をかけられるようになったと岸良さんは力説します。
ここでも、目標を共有することとともに期間という視点を強調しました。
時間が延びるとそれだけコストアップになります。逆に時間が短縮されるとそれだけコストダウンになります。
時間の無駄を省くことの重要性を繰り返し述べられていました。

うつになる職場について

どうしてうつになるのでしょうか

  • 楽しくない仕事
  • プレッシャー
  • etc.

これらは解決したい課題を上手く解決できないジレンマが原因です。
これを解決するには、現場任せではなくマネジメントが必要です。

CCPM(やAgile)を導入するにはどうすればいいかについて

ケースとロジックが必要と岸良さんは言います。
ケース(事例)だけでもロジック(理論)だけでもだめで、両方揃わないと上手くいかないということです。

所感

TOC/CCPM でも Agile でも重要になる考え方は重複していることが興味深いです。

  • 「顧客に価値を提供すること」と「投資を回収すること」
  • 目標を共有すること
  • 共感すること

出自の全く異なる Agile と TOC/CCPM ですが共通点の多さに驚きます。
また、現在の高度化されたプロジェクトの中では、個人だけで解決するには限界がきている点にも納得ができます。
改めて、Agile Japan 2012での岸良さんのキーノートセッションのサブタイトルが胸に響きます。

〜 変えるのは現場ではない、マネジメントである 〜